ビクトリア芸術大学 University of Melbourne (Victorian College of the Arts)

基本情報

科・専攻: デザイン専攻
課程: 修士
留学中の本学での身分:休学
藝大の指導教員: 鈴木太朗先生
留学先: University of Melbourne (Victorian College of the Arts)
留学国: オーストラリア
留学期間: 2019年7月19日~2019年 11月22日
留学先の指導教員: Leon Salom

留学までの経緯

[ 留学を志したきっかけ ]
舞台美術を専門的に勉強したかった。個人的に学生劇団にて公演を行ってきたが、藝大には専門の舞台美術の専攻は存在しないため、留学を決意した。

[ 留学先大学の探し方 ]
留学協定校の中から、「英語圏」「舞台美術」という状況で、必然的にメルボルン大学に決まった。学部生の頃にイギリスへ留学しようかと検討していたが、政治情勢(Brexit)等も考慮し、時期を改め大学院の時にオーストラリアへの留学を決めた。

[ 留学先大学を選んだ理由 ]
Performing Artsの分野でオーストラリア国内一位、世界ランク十六位という名門校だったから。またイギリスと同じく舞台芸術が盛んな国であり、メルボルンという都市自体が舞台の勉強に向いていたため。

[ 語学学習法 ]
学内審査への応募時にIELTS6.0(overall)を保持していた。メルボルン大学への出願の際には6.5(overall, 各セクション6.0以上)が要件であった。単語の暗記を中心に勉強したが、問題傾向に慣れるために、「The Official Cambridge Guide to IELTS」という公式問題集で勉強した。普段から勉強、映画鑑賞や読書等も英語ですることが多いため、基本的にIELTSに特化した勉強をしたわけでは無い。

[ 語学試験受験/試験名 ]
IELTS

[ 使用した教材 ]
The Official Cambridge Guide to IELTS, IELTS必須英単語4400

留学の準備

[ 出願手続きや入試内容 ]
学内審査で推薦内定が出た後は、個人で留学先大学に出願する。この時点で語学試験等の合格点は上回っている必要がある。事務的な書類に加え、ポートフォリオの提出が必須であった。提出から合否連絡まで全てがオンラインで審査するため、ポートフォリオはPDFやウェブ形式で提出する。面接は無かったため、具体的な履修等については渡航後に直接面談して行った(そのため留学の合否には関係が無い)。

[ 出願・入試の対策 ]
語学試験の合格点を取得していたとしても、ポートフォリオに文法的誤り、誤字脱字等が散見されるのは、あまり心証が良いとは言い難い。ネットの情報は鵜呑みにしない。例えば、審査日数が何ヶ月もかかる、或いはいい加減な手続きでたまに忘れられる、というようなことが記載されていたりするが、こちら側に不備が無ければ大学サイトに記載されている通りに進行し、至って事務的である。

[ ビザの種類 ]
STUDENT VISA(subclass 500)

[ 申請書類 ]
各政府の要求する書類(追加書類等はなし)

[ ビザの申請書類の提出先 ]
Australia Government, department home affairs

[ 申請費用 ]
44,703 円

[ 面接 ]
なし

[ 手続きに要した日数 ]
2日

[ 申請時の注意点 ]
留学大学からビザの種類やその他、強制加入の海外保険等の指示がメールで送られてくると思う。

[ 奨学金申請の有無 ]
あり

[ 奨学金名称 ]
JASSO海外留学支援制度奨学金、学内奨学金(海外留学支援奨学金、語学学習奨励奨学金)

[ 奨学金の種類 ]
給付

[ 支給内容 ]
総額 770,000円

[ 申請時のコツ・対策 ]
大学内の奨学金が二つ、大学外の奨学金が一つ。(これとは別途、留学とは無関連の給付型奨学金も受給していた)。奨学金の情報を調べるのは手間だが、案外種類は多く、美大留学生も多くはないため倍率もさして高く無いように思う。

[ 加入した海外保険の種類 ]
その他

[ 加入した保険名 ]
OSCH, 学生教育研究災害傷害保険付帯 海外留学保険

[ 加入したプラン ]
保険料節約プラン

[ 加入した海外保険の費用 ]
27,728 / 56,160

[ 留学前の予防接種/種類 ]
なし
種類: –

留学中

[ 現地での出迎え ]
あり

[ 出迎え費用 ]
なし

[ 到着後のオリエンテーションの有無・内容 ]
あり
内容: 全学科合同のオリエンテーションがある。基本的なルールや注意点、履修登録方法等の説明が行われる。キャンパスツアーの後に軽食が振舞われ、他学生との交流の機会が与えられる。ただし美術学部のキャンパスは別である。

[ 履修方法 ]
履修登録はオンラインで行う。履修が決定するまでの期間は追加変更は可能だが、留学の出願時に既に希望する授業の一覧を提出する必要がある。授業シラバスはオンラインにまとめられている。規程の単位数を超過して受講することは認められない。例外として藝大からの申請があった場合は可能であるが、このやりとりにも期間を要するため、僕の場合は諦めた。

[ 受講して満足した授業 ]
藝大では修士課程に在籍していたが、留学先では学部の講義を履修することを希望した。藝大での専攻とは異なる分野を勉強するためであったが、学年の垣根を超えて行われる合同授業等もあり、全体的にどの授業も満足であった。また、自分の勉強したいことを明確に伝えれば、各人に適した授業というのをアレンジしてもらうことができる。例えば、「Production Practice」の授業において、最初はWorkshop Crewの勉強をしていたが、Assistant of Set Designerに変更を申し出、承認してもらうことができた。

[ 大学の雰囲気 ]
全学部を総合すると人種や国籍等も多様であり、様々なバックグラウンドを持った人々が在籍している。またオーストラリア国内の大学ランキングにて第一位であり、国内外の優秀な学生が集まる。美術学部に限定すると、学生はほぼコケイジャンが占めるため、アジア人はかなりのマイノリティであるが、異文化に対し非常に寛容である。またポリコレの意識も高いため、差別を受けることは稀である。授業スタイルや慣習は欧米のそれに近い。例えば、ディスカッションやグループワークは頻繁にあり、規則は絶対的、成績評価は厳格である。

[ 留学先の支援体制 ]
住居は大学の学生寮に入った。授業が多く、また学習も基本的に図書館で行っていたため、寮は殆んど寝るためだけであったが、週に何度かは寮内のトレーニングジムや音楽練習室を利用した。大学生活の相談等は教務のバックアップ体制が強力であり、メールや電話で質問することができるが、教務へ行けば常時、二十人以上の専属スタッフが対応に当たってくれる。個別相談する際は事前予約が可能であり、パソコン完備のブースで担当者が相談に乗ってくれるため、問題が起きても心配する必要は無い。履修登録でエラーになったときや授業課題の相談等、僕も教務へ相談へ行ったが、すぐに解決することができた。

[ 留学先の街について(治安・気候・利便性・交通機関など) ]
メルボルンでは路面電車が主要交通手段となる。中心街から数駅ほど離れた場所に寮はあったが、大学まで電車一本で行けるため不便さは無い。またスーパーやカフェも近隣にあった。深夜に大学から帰宅することもあったが、治安は非常に良い。冬は日本よりも温暖であり、また一年を通して雨は少なく過ごしやすい。大都会であるためショッピングやレストランで困ることも無い。画材店は日本の方が充実しているが、基本的に大学側が材料や機材等は支給してくれるため、利用する機会はあまり無い。

[ 留学中に得たこと ]
授業は実技・理論共に体系的に学ぶことができる。また、各学期に二回ずつ一般公開の劇場公演を行う。これは俳優、ダンサー、脚本、照明、音響など、全ての学科が合同で行う授業であり、全員にとって最も重要な位置付けとなっている。

[ 留学先の授業について ]

 

履修科目名/担当教員 受講期間 単位数 授業時間数(週) 試験・成績評価方法
Production Practice 7月19日~11月22日

(18 週間)

13
単位
1回480分
週5回
実技 内容:メインの授業となる。各学期に二回ずつ一般公開で劇場公演を行う。平日の午後はすべてこれに割り当てられ、公演の直前期は夜間や週末にも制作を行う。各公演でチームの配属先が決められる。例えば、僕の場合だと一番目の公演ではAssistant of Set Designer、二番目の公演ではSound Crewに配属された。
Art effect and Performance 7月19日~11月22日

(18 週間)

13
単位
1回180分

週1回

複合 内容:舞台美術の理論系の座学。大学隣接の美術館での講義など、その内容は多岐にわたる。毎週、事前課題として指定の舞台公演の記録映像(または脚本)の視聴が課せられ、それをもとにゲスト講師が講義を行う。ディスカッションは頻繁にある。成績評価方法はプレゼンテーション一回、レポートが二本である。
Design Studio 7月19日~11月22日

(18 週間)

6単位 1回  240分

週1回

複合 内容:(隔週講義)。舞台の大道具、小道具のデザインを学ぶ。与えられた戯曲の舞台模型の制作を中心に評価が決まる。
Sound Design 7月19日~11月22日

(18 週間)

 6単位 1回  240分

週1回

実技 内容:(隔週講義)。音響技術の授業。音響機材、ソフトウェアの扱い方を学ぶ。与えられたテーマで数分の音源・音響システムを作成し、各自で機材を配線して実演することが最終課題。クラスメイトとペアになって行う。
Sets & Props 7月19日~11月22日

(18週間)

6単位 1回  240分

週1回

実技 内容:(隔週講義)。舞台機構(フライング、リグ等)の構造について実践的に学ぶ。普段の授業内での制作を通して評価は行われる。グループワークが中心である。
2D3D Visual Representation 7月19日~11月22日

(18 週間)

6
単位
1回240分

週1回

実技 内容:(隔週講義)。3Dソフトの扱い方や、デザインプレゼンで使用するドローイング 、模型制作等の技術を学ぶ。各セクションごとに小課題が出され、それぞれの合計点で評価が決まる。

[ 住居の種類 ]
大学寮

[ 部屋の種類 ]
2人以上でのシェア

[ 住居名 ]
303 Royal Parade

[ ルームメイト ]
男女混合

[ バスルーム・キッチン ]
共同

[ 食事 ]
自炊

[ 住居を探した方法 ]
大学を通じて

[ 留学希望者に推薦できますか ]
できる
理由:充実した設備である。ただし家賃は高い。

[ 大学の休暇時期 ]

[ 住居の一時退室 ]
なし

[ 住居に関するアドバイス ]
人気寮であり、手続きの際には注意が必要であった。例えば、入居承認のメールが届いてから、24時間以内に12万円を前金として振り込むように指示された。初回の海外送金には銀行での手続きには二週間を要し、またオンラインの送金サービスでも10万円を超える場合は一週間を要する。このことを説明したが、スタッフ間の連携が不十分らしく、度々催促の連絡が来た。ただし合理主義ではあるので論理的に交渉すれば応じてくれる。その他はセキュリティや設備も充実しており、瑕疵は無い。

[ 留学中の通院経験 ]
なし

[ かかった医療費・困ったことなど ]

[ 健康面に関するアドバイス ]
食事面で言えば、大学食堂は美術学部キャンパスには存在しない。フードトラックやカフェはあったが、弁当を持参する人が多かった。

[ 留学先での銀行口座開設の有無/開設した銀行 ]
あり
ANZ (Australia and New Zealand Banking)

[ 開設銀行を選んだ理由/口座を開設しなかった理由 ]
日本国内から事前開設が可能であった。ただし正式開設には現地で手続きをする必要があった。

[ 主に使用した支払い方法 ]
クレジットカード

[ 生活面に関するアドバイス ]
オーストラリアはキャッシュレスが進んでおり、屋台等も含め、ほぼ全ての場所でカードを使用できる。また交通機関の定期券もクレジットカードと連携させることができる。キャッシュを使わなければならない場面はほぼ無かったと言って良い。寮費の引き落としには現地の口座が必要であった。また友人らと外食し割り勘をする場合も、現金ではなくオンラインで送金した。現地に到着して即座に開設するのが好ましい。

[ 留学経費 ]

渡航費 140,000
入学金 0
授業料 0
教材費 0
住居費 850,000
食費 (実質的な物価は日本の1.2から2.0倍程度)
保険料 83,888
ビザ申請料 44,703
総額 1,118,591
現地通貨レート 1AUSD=75.77円 (2019年7月時点)

留学を終えて

[ 卒業・修了後の進路予定 ]
就職

[ 卒業・修了見込年月 ]
2021年3月 修了見込

[ 就職活動場所 ]
日本

[ 希望する就職先 ]
民間企業

その他

[ 留学中行って良かった美術館・コンサート等 ]
大学の周辺にはいくつもの美術館が隣接していた。またメルボルンは舞台芸術が盛んであるから、大劇場から小劇場まで幅広く存在している。現地の学生と共に小劇場へ足を運んでみたが、貴重な体験だった。

[ 留学準備・留学中に役立った書籍・ウェブサイトなど ]
欧米の美大では往々にしてレポートやエッセー(小論文)の課題があることが多い。ある程度はそれらの「書き方」を知っておくと便利だと思う。

[ 留学に役に立った藝大の授業 ]
実技系の授業全般は役に立つ。技術面でアドバンテージがあるのは悪いことでは無い。

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※学外へは一部を抜粋して公開しています。
※国際企画課窓口にて同じ内容の報告書を閲覧することができます。