基本情報
名前: 若尾和真
学部・科or 研究科・専攻: 美術研究科・建築専攻
課程: 修士
留学中の本学での身分: 休学
藝大の指導教員: 藤村龍至先生
留学先: Vienna University of Technology(ウィーン工科大学)
留学国: オーストリア
留学期間: 2023年8月31日~2024年6月30日
留学先の指導教員:
留学までの経緯
[ 留学を志したきっかけ ]
もともと建築を形作る外側である社会構造や法体系などに興味があり、それらが全く日本とは異なっている環境に建つ建築を勉強することを目的として留学したいと考えるに至りました。
[ 留学先大学の探し方 ]
日本と異なる社会構造を持つ国として、歴史的に東西の境界として存在していたオーストリアやドイツに興味がありました。その中で交換留学先大学の候補の中から選びました。
[ 留学先大学を選んだ理由 ]
ウィーン工科大学を選んだ理由は、ウィーンという都市にあるということもさることながら、日本人をとても手厚く迎えてくれる体制が整えられているという点が大きいです。ウィーン工科大学にはJASECという、日本人留学生を受け入れ、日本へウィーン工科大学の学生を送り出すための機関があります。そこには日本人が使用可能な大きなデスク、プリンター、ディスプレイや模型製作の可能な部屋など、様々な設備が整えられております。またその事務所内には日本語書籍の本棚もあり、古い建築雑誌を見ることができます。そしてビザ申請を強力にサポートしてくれる日本人職員の方も在籍しており、このようなことを前に同大学に留学していた先輩に聞いたこともあり、これがこの大学に留学する理由のうちの一つです。もう一つの大きな理由は、ウィーン工科大学は近年建築教育に非常に力を入れているということで、日本人に限らず留学生への支援が手厚い点もあります。英語の講義とスタジオが非常に充実しており、そのためか世界中から講義のために講師が来ております。この点もウィーン工科大学を選んだ理由です。
[ 語学学習法 ]
TOEIC対策・欧州から来た友人との英会話
[ 語学試験受験/試験名・レベル ]
・TOEIC /・TOEIC:約600点 ・EF SET: B2
[ 使用した教材 ]
TOEIC公式問題集、TOEIC L&Rテスト基本単語帳
留学の準備
[ 出願手続き・入試内容 ]
基本的な芸大での履修状況と成績表、ポートフォリオ、TOEICスコアでの出願。書類審査のみで入試のための試験や面接はなし。スタジオをとる場合、そのスタジオを履修するための審査あり。私の場合はポートフォリオの提出がありました。
[ 出願・入試の対策 ]
ポートフォリオの作成と英語が主。その他は時間内に書類を作成し制作できれば支障はないのではないかと思います。
[ ビザの種類 ]
Aufenthaltsbewilligung – Student
[ ビザの申請書類の提出先 ]
ウィーン市役所35課
[ 申請に必要な書類 ]
・申請用紙 ・パスポート写真 ・ウィーン工大からの受け入れ証明書 ・ウィーン工大の学生登録証明書 ・ウィーン工大からの入学証明書 ・留学期間証明書 ・健康保険登録証明 ・「現在保険に加入しているという証明」„Versicherungsdatenauszug“ bei ÖGK ・口座残高 ・奨学金証明書 ・保護者の収入証明 ・保護者からのスポンサー証明 ・賃貸契約書 ・オーストリアの住民票 ・出生証明書 ・戸籍謄本(アポスティーユ付き) ・無犯罪証明書(アポスティーユ付き) ・パスポート ・すべての書類のコピー
[ 申請費用 ]
翻訳作業:75EUR 申請手数料:160EUR 計39010円(記入日レート)
[ 面接 ]
あり
[ 手続きに要した日数 ]
80日
[ 申請時の注意点 ]
担当者の裁量によっていかようにも簡単にもめんどくさくともなりますので、できる限りの書類をそろえて身なりを整え、礼儀正しく真摯に望んでください。
[ 奨学金申請の有無 ]
なし
[ 奨学金名称 ]
JASSO 海外留学のための給付奨学金 海外留学支援制度(協定派遣)
[ 奨学金の種類 ]
給付
[ 支給内容 ]
月額/8万円
[ 申請時のコツ・対策 ]
おそらく芸大在学中の成績によって決まっているものと思われます。これは交換留学申請と同時に申請されるものであり、私自身も教授の方から前触れもなく給付されることが伝えられましたので、そのためにも普段からよい成績をとる(?)ことが必要だと思います。
[ 加入した保険の種類 ]
留学先大学指定保険
[ 加入保険名 ]
ÖGK (Austrian Public Health Insurance)
[ 加入したプラン ]
Selbstversicherung für Studierende
[ 加入した海外保険の費用 ]
毎月約66EUR
[ 留学前の予防接種/種類 ]
なし
留学中
[ 現地での出迎え ]
なし
[ 到着後のオリエンテーションの有無/内容 ]
あり/学生証発行、シラバスの閲覧方法、履修登録の説明など
[ 大学の雰囲気 ]
留学生が非常に多く明るい印象。講師もすれ違うと立ち話をしてくれた。ただ、ヨーロッパの大学院であるために作業スペースを確保するのは基本的には難しく、学生が多く居り楽しい反面窮屈な印象も受けました。
[ 留学先の支援体制 ]
日本人講師もおり語学、精神面などについては手厚いサポートがあります。また勉学についてもいろいろと相談に乗ってくださり、非常にありがたい思いをしました。どれもこれもJASECがあってよかったなと思う限りです。
[ 留学先の街について(治安・気候・利便性・交通機関など) ]
ウィーンは世界で最も住みやすい都市として毎年選ばれておりますが、それについては疑う余地もないでしょう。治安は東京より良いのではないでしょうか。また気候について、冬はさすがの厳しさです。-15℃くらいは覚悟する必要がありますし、日も1日5-6時間ほどしか登らない時期があります。その点については人によりますが、鬱っぽくなってしまう人もいるようです。その反面、夏はずっと25℃、10時まで明るく、研究や講義終わりに友達とドナウ川で飲むビールがおいしかったです。その他交通機関は発展しており、ある程度正確で信頼できるものでした。その他について、やはりドイツ語圏であるために労働者保護の視点が強く、ほとんどのお店は日曜日は閉店、平日であっても夜19時以降スーパーは閉まります。外食は高いので、その時間までに何とか買い込む必要があります。その点においては日本と大きな違いを感じます。
[ 留学中に得たこと ]
上記でも述べましたが、日本と全く社会が異なっている点から多くのものを得ました。日本では非常に消費しやすいが労働者視点で見ると厳しい社会であったことや、日本と政治的に共にある西側諸国と少し距離があるためにロシアやウクライナ、ハンガリーやスロバキアなど東側諸国からの留学生も多くいる点などは、私に多くのことをもたらしました。それは例えば都市や建築にかかる法律の強弱、建築家として求められているスキルや知識の違い、政治性が表立っている点など様々です。ウィーンという日本からしたら東寄りな都市と大学に一年いたことにより、私は日本の社会や建築、市場を相対化することができました。これは私が都市や建築のことを考えるときに非常に有用な視点であるといえるでしょう。
[ 現地での語学研修歴 ]
なし
留学先の授業
[ 履修方法 ]
大学の提供するサイトで履修
[ 受講して満足した授業 ]
スタジオ:Hardware/Software
[ 具体的な授業内容 ]
履修科目名/担当教員 | 受講期間 | 単位数 | 授業時間数(週) | 試験・成績評価方法 | |
253K27 Exercise Design Studio “Hardware/Software”/Kitaev, Artem Gregoric Dekleva, Tina | 2023/10/1~2024/1/31(14週間) | 10単位 | 1回240分(週1回) | 複合 | 建築物の改修について政治的、実務的に学ぶ。教員の選んだいくつかの敷地から選択し、グループで作業に当たる。インスブルック工科大学との合同スタジオ。 |
住居
[ 住居の種類 ]
シェアハウス
[ 部屋の種類 ]
一人部屋
[ 住居名 ]
Popup dorm
[ ルームメイト ]
同性のみ
[ キッチン ・バスルーム]
共同・共同
[ 食事 ]
自炊
[ 住居を探した方法 ]
大学を通じて
[ 留学希望者に推薦できますか ]
わからない
[ 留学希望者に推薦できる理由 ]
ウィーン内では格安な物件。そもそもシェアハウスなので安易にほかの人にはお勧めできないところがあります。ただ、この寮はウィーンにあるヨーロッパ最大の都市再開発地にあるので、そちらに興味がある方はおすすめです。またウィーンの郊外にあるので、自然がいっぱいです。
[ 大学の休暇時期 ]
Lecture free time (winter break): Friday, 26 January to Thursday, 29 February 2024/ Lecture free time (summer break): Saturday, 29 June 2024 to Monday, 30 September 2024
[ 休暇時期の一時退去 ]
なし
[ 住居に関するアドバイス ]
個人的には、シェアハウスの同居人と話したり同じアパートにいた人と話す時間がかなり長かったので、ほかの学生と話したい人はシェアハウスがおすすめかもしれません。ただやはり水回りなどは共同となるため、それを許容できるかどうかは問題になると思います。少なくとも、日本人の想定するよりもきれいに使用されることは少ないと言えるので、その点は念頭に置いた方がいいかもしれません。
医療
[ 留学中の通院経験 ]
なし
[ 困ったこと・健康面に関するアドバイス ]
夏と冬で日照時間が大きく変化します。それで鬱っぽくなってしまう友達もいましたので、冬はできる限り太陽を浴びた方がいいように思います。またそのようなサプリメントは薬局ですぐに手に入るため、そういうものも視野に入れるとよいかもしれません。
生活面
[ 留学先での銀行口座開設の有無/開設した銀行 ]
あり/Bank of Austria
[ 開設銀行を選んだ理由/口座を開設しなかった理由 ]
在留許可に必要だったため/大学から至近の距離に支店があったため
[ 主に使用した支払い方法 ]
デビットカード
[ 生活に関するアドバイス ]
基本的に物価は高いので、自炊をすることをお勧めします。また在留許可申請のためにまとまった資金が必要であることや、申請の72時間以内に発行された口座の残高証明が必要になることから、日本の銀行だと対応が難しいかと思います(本人からの申請意外だと手間がかかると思うので)。また日本のカードを利用すると数パーセントの手数料がかかります。そのような理由で現地の口座を作りカードを発行しました。
留学経費
渡航費 | 400,000 | 円 |
入学金 | 3,630 | 円 |
授業料 | 0 | 円 |
教材費 | 0 | 円 |
住居費 | 676,500 | 円 |
食費 | 500,000 | 円 |
保険料 | 108,900 | 円 |
ビザ申請料 | 39,010 | 円 |
その他(模型材料費) | 66,000 | 円 |
その他(旅行・研修費) | 400,000 | 円 |
その他(書籍費) | 100,000 | 円 |
総額 | 2,255,030 | 円(1年あたり) |
【現地通貨レート】 | 165円(2024年7月29日) |
留学を終えて
[ 卒業・修了後の進路予定 ]
就職
[ 卒業・修了見込年月 ]
2025年3月 修了
[ 就職活動場所/希望する就職先 ]
日本/民間企業
[ 今後、藝大に望むこと ]
外国人留学生をより多く受け入れてほしいという思いはあります。私は留学でいい経験をしました。日本で留学生と話ができれば、留学に行こうとする悪性の数が増えるかもしれません。それは個人的にはよいことなのではないかと思います。
[ 留学中行って良かった美術館・コンサート等 ]
Muro del Gueto Judío/Österreichische Postsparkasse/Haus Wittgenstein/Museum Boijmans Van Beuningen/ベネチアビエンナーレ/Karl-Marx-Hof/Kolumba/Timmerhuis – OMA/Rietveld Schröderhuis/WoZoCo/Checkpoint Charlie/Elbphilharmonie Hamburg/Bruder-Klaus-Feldkapelle/Karlowicz Philharmonic
[ 留学準備・留学中に役立った書籍・ウェブサイトなど ]
特になし
[ 留学に役に立った藝大の授業・理由 ]
建築設計/アーカイブ概論/劇場芸術論/特論 都市計画論・建築設計については、留学に必要な基礎的経験が必要であるために必須であると感じた。アーカイブ概論は実際に講義で出てきた内容や思想に向こうで晒される機会が多かった。劇場芸術論は、ウィーンでのオペラ鑑賞体験を補完してくれ、都市計画論で学んだ日本の基本的な都市構造はウィーンの都市を読み解く際の比較元として役に立った。